イシヅカユウ、眼差しの秘密

愛用コスメや美のインスピレーション源、主演映画『片袖の魚(仮)』についてPodcastの内容をダイジェストでお届け。
長田杏奈 2021.01.07
誰でも

こんばんは。2020の疲れを癒していたら、お正月休みが明けていた長田です。みなさまつつがなくお過ごしでしょうか? 今年は、話を聞きたい人にはどんどん聞くって決めたんだ。インタビュー企画を通して、こんな素敵な人がいるよ、こんな考え方や暮らしもあるよなど、月1~2度のペースで皆様にシェアする所存です。というわけで、なんかなんかコスメ初のゲストは、ファッションモデルのイシヅカユウさん! ニュースレターでは、愛用コスメや美のインスピレーション源、主演映画やおすすめ作品などについて一部をダイジェストでお届けします。(Podcast「なんかなんかコスメ」対応エピソードS1E52

今日のゲスト:イシヅカユウさん

Profile:ファッションモデル。ファッションショー、スチール、ムービーなど、さまざまな分野で個性的な顔立ちと身のこなしを武器に活動中。また、体が男性として生まれながら女性のアイデンティティを持っているMtFでもあることから、最近ではテレビやラジオなどで意見や体験を発信するなど、活躍の場を広げている。

イシヅカユウのBeauty Tips

静止画もいいけど動いても唯一無二。アバンギャルド、ナチュラル、ノーブル、クラシック……いろいろな表現の引き出しを自在に開いて見せつつ、ベースに品の良さと文化的素養の奥行きを感じさせる人。存在自体が爆イケのイシヅカユウさんのBeauty Tips!

・仕草まで美しい山口小夜子の衝撃

ギャル全盛期の2007年。高校生だったイシヅカさんは、徹子の部屋の追悼特集で在りし日の山口小夜子さん(70年代に一世を風靡したファッションモデルで、パフォーマー。パリやニューヨークのランウェイを歩き、センセーションを巻き起こした)の美しさに衝撃を受けます。当時メインストリームだった西洋のお人形さんのような美とは逆ベクトルの、「むしろ日本人形」な美は、その後のイシヅカさんに大きな影響を与えることになります。メイクはもちろん、指先まで神経の行き届いた立ち居振る舞いの美しさにも多大なインスピレーションを受けたそう。

・あえてビューラーをかけず、まつ毛の影を愉しむ

まつ毛をカールせずにマスカラを塗ることが多いというイシヅカさん。山口小夜子さんとの出会いをきっかけに、「まつ毛の影が落ちる幽玄な美しさ」を発見。

・跳ね上げ点を決めてから描くアイライン

跳ね上げラインを引くときは、あらかじめ目尻に”跳ね上げ点”を描いてゴールを決めるのがポイント。イシヅカさんのTwitterInstagramで、バリエーション豊かなアイラインをチェックしてみてね。

遠目で差がつくグレージュのアイライナー

愛用のアイライナーはラブ・ライナー リキッドアイライナーのブラックとグレージュ。グレージュは、遠目でみたときのラインの馴染み感とニュアンスに差がつくのだとか。

*配信中に長田が熊野筆と騒いているけど、別ブランドと間違えておりました(陳謝)。

・ソバカスは「消したい」から「チャームポイント」へ

幼少期にからかわれ「消したい」と悩んだこともあるソバカス。モデルの仕事を始めて周囲に褒められるという目うろこ体験を通して、いまでは自他共に認めるチャームポイントに。

・化粧水は惜しみなく。たっぷり塗ってからコットンパック

コスパのいい化粧水を惜しみなく使う派で、たっぷり塗った後にコットンパックするのが定番。愛用はアクアレーベルで、これから使ってみたいのはIHADA

・おうちで若尾文子映画祭♡

「ガラの悪い役でも品がいい」若尾文子さんのガチファン。若尾文子映画祭に通い詰めた時期を経て、現在はAmazonプライムビデオの角川シネマコレクションに登録。若尾文子さん見放題を満喫中! 

そんなイシヅカさんが推す、若尾文子作品初めて観るならこの3作品
・コメディが好きなら……『最高殊勲夫人』
・ブラックユーモアがほしいときは……『しとやかな獣』
・不条理な展開にドキドキしたいときは……『女は二度生まれる』

主演映画『片袖の魚』(仮)のこと

2021年に公開予定の映画『片袖の魚(仮)』。文月悠光さんの詩集『わたしたちの猫』に収録されている詩を原案にしたこの作品で、イシヅカさんは主役を務めています。2020年12月11日に情報が解禁になると、さまざまなメディアで「日本では初となる、トランスジェンダー当事者の女性俳優を公募した映画」と報じられました。

イシヅカユウ ISHIZUKAYU
@ishizukayu
【告知】

本日情報解禁された、文月悠光さんの詩を原案とした東海林毅監督の映画「片袖の魚(仮題)」で畏れ多くも主演を務めさせて頂きました。来年公開を予定しております。どうぞよろしくお願い致します。

natalie.mu/eiga/news/4083…
文月悠光の詩「片袖の魚」映画化、トランス女性のイシヅカユウが主演 詩人の文月悠光が原案を担当する短編映画「片袖の魚(仮題)」の製作が明らかに。「老ナルキソス」「ホモソーシャルダンス」など natalie.mu
2020/12/11 10:17
140Retweet 893Likes

告知ツイートの後、彼女はこんな言葉もつぶやいていました。

インパクトの強い見出しにつられてつい取りこぼしてしまいそうになる、イシヅカさんの思い。どんな気持ちでこのようにつぶやいたのかを伺ってみました。ご本人の声色、ニュアンスも大事な話題だと感じるので、このくだりは是非Podcastで聞いてみてね。途中の大事な場面で機材トラブルがあってごめんなさい……。

・トランスジェンダー役をトランスジェンダーが演じることの意義

例えば、最近でいうと『ミッドナイトスワン』でトランスジェンダー女性役を演じた草彅君の演技が絶賛されていましたよね。これまで長らく、シスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と性同一性が一致し、それに従って生きる人)がトランスジェンダー役を演じるのは当たり前で、自分とは異なるジェンダーを演じる俳優の演技力が賞賛され続けてきました。しかし、さまざまな作品や演技が讃えられる陰で、トランスジェンダー当事者の演じる機会が顧みられてこなかった現実があります。一つの作品をキャスティングの面だけに偏って取り上げることには慎重であるべきですが、『片袖の魚(仮)』はトランスジェンダー女性がトランスジェンダー女性を演じるという、画期的な側面のある作品です。

イシヅカさんのお話にもあったように、「トランスジェンダー役にはトランスジェンダーの演者を」という意見は、未来永劫シスジェンダーはシスジェンダー、トランスジェンダーはトランスジェンダーしか演じてはならないという極論ではありません。現状、あまりにも機会やルートが限られてしまっているということへの問題提起なのです。

例えが無理矢理かもしれませんが、ジェンダーギャップ指数が121位の日本では、女性の政治家や会社役員など指導的なポジションに圧倒的に女性が少ないことが問題になっています。現場の本音的に「人材がいない」、「最後は実力だから」みたいな話も出てきますが、私には生存バイアスorマジョリティの言い訳に聞こえます。割合を決めて増やすなど、機会を増やす施策がないままでは多様性が損なわれたまま、女性に不利な状況が続いてしまいますよね。

機会やルートがないというときは、間口を広げる策や配慮が必要です。それはマイノリティの置かれた状況を改善するだけでなく、社会全体をよりよくすることに繋がっていると私は考えます。ちなみに女性はざっくり人口の半分いますが、トランスジェンダーは人口の1.8%(シスジェンダーは93.9%)。当事者の声だけでは状況を変えるのが難しそうだから、困っていることがあったら邪魔にならない程度に手伝いたいと思いませんか?

ハリウッドでトランスジェンダーがどう描かれてきのかを、当事者の言葉や映像資料を手がかりに紐解くドキュメンタリー作品です。当事者不在の作品は、機会を奪うだけでなく、偏見やステレオタイプを助長してしまうこともあるのだとわかります。

1980年代のニューヨークを舞台に、ボール・カルチャー(ル・ポールのドラァグレースでよくボール・カルチャーリスペクトの企画がありますよね。あと、マドンナの楽曲に取り入れたれたヴォーギングもこのカルチャーから生まれたダンスです)を通してクィアコミュニティを描いた作品です。めちゃ面白いです。『glee/グリー』でも知られるエグゼクティブプロデューサーのライアン・マーフィーは、「ストレートの男性がトランスジェンダー役を演じる時代はもう終わり。ハリウッドで働きたいと思いながらもなかなかチャンスを得られない人々へ、より多くの機会を提供する時期だ」と語り、全米で半年間にもわたる大規模オーディションを実施。5人のトランスジェンダーの俳優がレギュラーキャストとして決定し、総勢50人のトランスジェンダーの俳優が起用されました。自分たちと同じ属性をもつスターが素晴らしい活躍をする姿を見たら、元気づけられる人がたくさんいるよね。

(ちなみに私はNETFLIXで全裸監督の続編が作られることがショックで、一時的にボイコットしているんですが、すごくいい作品もたくさん配信されているんだよね……)

今回のPodcastの中で、「男なのにきれい」「まとめ記事に”実は男だった”と書かれること」の違和感について、イシヅカさんの体験談を伺いました。後で聞き返してみて、私の相槌と例えの出し方が卑近でズレていたし、説明不足だなと感じたので、以下、補足として付け加えさせてください。

トランスジェンダーやノンバイナリーの当事者を傷つける典型的な差別として、性自認と異なる取り扱いをする「ミスジェンダリング」があります。例えば、トランスジェンダー女性に対して、「男なのにきれい」「実は男だった」「彼は」のような言い回しをするのは、差別に当たります。また、「ミスジェンダリング」の現れとして、以前の名前……ネットニュースでよくあるケイトリン・ジェンナーをブルース・ジェンナーと表記したり、エリオット・ペイジをエレン・ペイジと許可なく呼んだり書いたりする「デッドネーミング」があります。

ついでに言うと、悪気のないカジュアルな差別を「マイクロアグレッション」と呼びます。詳しくは以下の記事を参照ください。

悪意は論外として、好意や賛美、注目を表現するつもりで誰かを傷つけてしまわないよう、お互い気をつけようね♡

『片袖の魚』が収録されている文月悠光さんの詩集『私たちの猫』(ナナロク社)、私はサイン本を持っているんです。帯と解説に大好きな友人の雨宮まみさんが言葉を寄せていることもあり、個人的に思い入れの強い作品なんだ。イシヅカユウさん主演映画『片袖の魚(仮)』は絶賛編集中とのことなので、公開を楽しみに待ちたいと思います。

昨晩デジタル通の友人からLINEがきて、「Podcastの内容を、どうニュースレターに落とし込むか悩んでる」と送ったら、「それは今世界中のジャーナリストが頭を悩ませてることですよ」と教えてもらいました。Podcast&ニュースレターの組み合わせって、ワールドワイドで見たら流行っているらしい(知らなかった)! ちょっと近い感じがして、やってる方も癒されてます。関連記事のリンクを送ってもらって読んだら「簡潔さが大事」って書いてあったので、特に前半は簡潔にしてみたつもり……。引き続き試行錯誤しながら通信いたしますので、引き続きよろしくお願いいたします。ままならぬことも多くありますが、どうぞ健やかに心穏やかにお過ごしくださいませ。

長田拝

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