スコットランドの性暴力防止キャンペーン #DontBeThatGuy 「あんなやつになるな」
お元気ですか? スコットランド警察が製作した性暴力防止啓発動画「 #DontBeThatGuy」に日本語字幕をつけたのでその話をするね。
ニュースレター「なんかなんか通信」は、美容ライターの長田杏奈が、コスメや気になるトピックについてお届けするニュースレター。女友達に手紙を書く気持ちでしたためて投函します。
この話はどこからしたらいいのか。あまりにひどい目に遭った人の話を聞いたり、SNSで想像を絶するオンライン暴力に晒されている人(多い!)を目にすると、二次受傷のような状態になりがっくり力を削がれてしまう。その多くは女性で、他のマイノリティ性が重なるとさらにひどい。いっぺんにいろいろ見過ぎてしまい、ああもう何もできないしたくないと無力感で動けなくなった日があった。毎年たくさん注文するチューリップやフリチラリアの春球根もたくさん届いているけれど、ダンボールのまま開封できていない。
「女性を守ってあげる」ではない
そういう中で、ちょっと可能性を感じたのがスガナミユウさんの文章だった。男性優位な社会でシスジェンダーでヘテロセクシュアルの年長男性であるご自身の特権性を思い知った体験を真摯に綴っている。私も『みんなの未来を選ぶためのチェックリスト』の記者会見を視聴したり、スタンディングや街宣にも参加していたので、人となりが分かり易かったというのもある。あの場に立ち会っていて、スルーせずに後日こういうアウトプットをするマジョリティ属性の人がいたということに希望が持てた。
特に、私が信頼できるなと感じたのは、「“女性を守る”的なメンタリティは不要」のくだり。それを指摘する仲間がいて、スガナミさんが気づけるところがいい。「守ってあげる」というパターナリズムは支配の感覚に近く、期待された「守ってあげたくなるような像」を逸脱した瞬間に憎悪に転換することがある。だから、「女性は守るべき対象」という感覚には警戒心がある。個人的には「君を守りたい」系の歌詞やストーリーにも、弱体化の呪いと束縛の恐怖を感じる。伝わりづらい話かもしれないけど、特権のあるマジョリティとして差別や不均衡や暴力に介入する話と、無力でか弱いものを守ってあげるという話は、同じようで全く別物。別物なんだよ〜。
警備にあたり、“女性を守る”的なメンタリティは不要という言葉でした。
これは本当に大事なことで、その前提を理解せず腕をまくり出す男性がこの国には多くいること、それこそが男性主体の社会を作ってしまっているということに、男性は気づかなければいけません。
女性は守るべき対象、という認識が、結局は構図を作ってしまっている。
ただトラブルや危険を回避するために動くことが重要。ただそれが重要なんだと、あらためて感じました。
助けてほしいわけじゃない
ただ「助けてほしい」みたいな話じゃないんだよね。当事者属性としてできることは既にやっているなかで、攻撃されにくい属性の人に余裕がある時でいいから介入してほしいというだけの話。男性女性だけに当てはまる話じゃない。被害に遭ってない第三者が二次加害に介入したり、国籍がある人がそうじゃない人に対する権利侵害に声をあげたり、トランスジェンダー差別にシスジェンダーが反対したり。いろいろな要素が交錯する中で、特権に自覚的になってできることをやろうぜというちょっとした意識と実践の話。
スガナミさんは上記の文章を発表する前に、Twitterでも投稿をされていた。
これまで女性から「おじさんは〜」と言われる度に胸がキューってなっていましたが(自分がおじさんなので)、
活動を共にする女性たちへのマンスプやミソジニーを目の当たりにして、本当におじさんがこの国を悪くしていると痛感した。
意地悪な見方かもしれないけど、こういう話をした時に賞賛されても調子に乗って口が滑ってボロが出たりせず、「男だから聞いてもらえるんだ」という指摘(事実そういう側面は大きいので)に逆ギレしたりせず(女のためを思って言ってやったのに、感謝しないとは何事だ!みたいにキレる人をたくさん見てきたから)。いろいろ消化して、文章を出すという流れもいいなと思った。
そのあと、Twitterスペースでスガナミさんたちが二次加害のトピックで話しているのを聞いたけど、参加した女性の具体的でえげつない被害と男性たちの「こうありたい」の話にはけっこうな落差があって。見えてる世界が全然違うのがよくわかった。
#DontBeThatGuy「あんなやつになるな」
スガナミさんの文章を読んで思い出したのが、スコットランド警察製作の#DontBeThatGuyキャンペーンだった。被害者属性に注意を促すのではなく、マジョリティ自らが意識と文化を変えようというメッセージが心から羨ましかった。「もうやだよー」「でもこんなの(希望)もあったよ」みたいなやりとりから、劇団雌猫のかんちゃんが英訳して字幕をつけてくれた。InstagtamとTwitterに載せたら、かなり反響があった。
このキャンペーンには特設サイトもあり、男性に対しての性暴力防止メッセージも参考になります。