「ストップフェミサイド」ステッカーを作ったよ #StopFemicides

女性に対する暴力の背景には何がある? どんな対策があるの?
長田杏奈 2021.11.05
読者限定

 友人のmaccaさんと一緒に、「ストップフェミサイド」ステッカーを作りました。maccaさんは私の発案と書いてくれたけど、他の企画について進めている中でmaccaさんが閃いたアイディアを形にしたものです。今回は、なんで「ストップフェミサイド」したいのかイントロデュースがてら、フェミサイドについて書いてみようと思う。長いので、お時間あるときに。

macca
@macca_aka
長田さん @osadanna 発案のステッカーシリーズ、第4弾の絵を描きました。
2021/10/16 14:19
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ニュースレター「なんかなんか通信」は、美容ライターの長田杏奈が、コスメや気になるトピックについてお届けする、Podcast「なんかなんかコスメ」連動のニュースレターです。週に3、4通を目安に、女友達に手紙を書く気持ちでしたためて投函します。今回はちょっと、女友だちに新聞の切り抜きを送りつけるようなテイストになってます。

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「これってフェミサイド」じゃない?

 小田急で刃物を振り回した男性は「幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」、川崎の路上で男児と母親を刺した男性は「女性を殺してあげたかった」と、それぞれ供述したことが報じられた。そういうニュースに触れると、普通に日常生活を送っているだけで、勝手に「幸せそうな女性」と決め付けられて殺されそうになったり、「女性を殺してあげたい」と襲いかかられるのかと不安になる。

 友人と「これってフェミサイドじゃない?」とLINEで話し合った。詳しくは後述するけど、ざっくりいえばフェミサイドとは「女性が女性だからという理由で男性によって殺される」ことを指す。SNSでもフェミサイドへの危機感を訴える声があがったものの、即座に「フェミサイドなわけがない」冷水を浴びせる動きが目立ち、その間髪入れなさが余計に恐怖を煽った。

 普段から、性差別やジェンダーギャップについて訴えると、現実的で合理的な配慮だと諭されたり冷笑される。セクハラや性暴力について声をあげると、自意識過剰・勘違い・気にし過ぎと受け取り方の問題にされる。「あれ、これって?」という違和感の芽さえも早々に摘まれて、蓋をされそうになる。だから、「フェミサイドじゃない?」という不安を嘲笑されたり、勘違いや早とちりだと否定されるのも、慣れたくないがいつものことではある。

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「私だったかもしれない」と「次はお前かもしれない」

 ヘイトクライムは、被害者と同じ属性を持つ集団に「次はお前かもしれない」と警告し、恐怖と抑圧を与える。ヘイトクライム鑑定士のご意見はさておき、女性たちの間で「私だったかもしれない」という恐怖と問題意識が伝播したのは事実だ。韓国で「女性嫌悪殺人」として問題になった江南駅殺人事件について、ヘイト問題の研究者であり差別禁止法制定を目指す活動家のホン・ソンスは、以下のように指摘している。

 厳密な学問的、実務的な概念によって女性嫌悪犯罪ではないと仮定してみよう。だとすれば、この事件について女性たちが見せた反応の意味を過小評価しても良いのだろうか。女性たちが訴えた日常的なヘイトと差別の問題が常に物理的な暴力に結びつく可能性を、無視できるだろうか。この質問を無視することができないのなら、生き残ったわたしたちみんなに、この問題を一緒に悩むべき倫理的、市民的責務があるのだ。
たとえるなら、わたしたちは大規模な噴火によって地中に巨大なマグマが流れていると言う事実を確認したのと同じだ。だとすればそのマグマを取り除くべきだ。マグマの存在を確認した以上、火口だけをふさいでもあまり意味はない。男性たちの認識の底にある女性嫌悪は性的対象化、セクハラ、ヘイト表現、雇用・サービス・教育などでの差別、ストーカー、デート暴力、暴行、性暴行、そして殺人にいたるまで実に多様な領域で、多様なかたちで表れる。
ホン・ソンス 著、たなともこ・相 沙希子訳『ヘイトをとめるレッスン』(ころから)より
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女性に対するヘイトクライムを言語化する

 SNSで「フェミサイド」に言及された投稿をひと通り振り返っていたら、「フェミが乱用する造語」と嘲笑されていた。実際、「フェミサイド」は造語であり、ダイアナ・ラッセルというフェミニストによって広められた。ラッセルはもともと近親姦虐待や家庭内暴力について研究していた社会学者で、「フェミサイド」も通り魔のような事件だけではなく、顔見知りや近親者による暴力も射程に入れた言葉だ。

  ラッセルは1976年にフェミサイドを「男性が女性を、女性であることを理由に殺すこと(the killing of females by males because they are female)」と定義。その後、「女性嫌悪による、男性による女性の殺害」と動機を紐付けたり、「女性であることを理由とした、1人以上の男性による1人以上の女性の殺害」と複数人が関わるケースも含むとしている。また、持参金殺人や名誉殺人、FGM(女性器切除)など、「家父長制の代理人」である女性がフェミサイドの主体となる可能性も示唆(このあたりはカナダの団体のまとめがわかりやすかった)している。ちなみに、国際機関などの調査レポートに目を通していると、「フェミサイド」という言葉はどのような文化のもと、何を訴え守りたいかによって柔軟に幅を持たせながら進化し、機能していることがわかる。

 ラッセルは、南米のフェミニストとの共編著『Femicide: The Politics of Woman Killing』(『フェミサイド:女殺しの政治学』、日本語訳出版されてくれ〜)の中で、「性差別的な振る舞いのなかで最も暴力的な形態である殺人は、女性に対する憎悪の残忍な現れとして、まだ広く認識も認知もされていない」と解説している。この本が出版されたのは、1992年。当時は「セクシュアル・ハラスメント」や「デートレイプ」「DV(ドメスティックバイオレンス)」などの言葉が生まれ、認知度が上がった時期だ。多くの女性が直面してきた暴力に続々と名が与えられるなか、女性嫌悪に基づくヘイトクライム「フェミサイド」について警告したラッセル。今はもう2021年。女性に向けらる激しい嫌悪と暴力に名を与え、可視化するために生み出された言葉を当事者が用いることは、いたって正当だ。

 ちなみに、ラテンアメリカを中心としたムーブメントの中で、スペイン語で「Feminicidio」と呼ばれたものが、英語に訳されるときに「Feminicide」となる。もともと男性パートナーの女性に対する暴力が「Crimen Pasional(情熱の犯罪)」と美化されがちな背景があり、卑劣な行為を装飾せずに表す言葉で名付け直すことに意義があった。また中南米では、マフィアなどの犯罪組織による被害も問題となっている。

BuzzFeed Japan News
@BFJNews
「レイプしたのはあなただ」
「私のせいじゃない。私のいた場所や服のせいでもない」

南米チリの女性たちが始めた“あるダンス”が、女性に向けられる暴力、その被害を見過ごし、助長する警察や司法を痛烈に批判するムーブメントとなって、世界中に広がっています。 #UnVioladorEnTuCamino
2019/12/06 17:02
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家父長制とフェミサイド

 ラッセルはフェミサイドを引き起こす要因として、「女性嫌悪」や「性的快楽」の他に、「女性は劣位だという感覚」や「女性を所有しているという思い込み」を挙げている。家父長制は、構造的に女性を劣位に位置付け、女性所有の幻想を抱かせる。そして、家父長制が強固な文化圏では、女性は尊重すべき個人としてではなく、家長の所有財産であり家の構成員として、献身的なケアや愛情(性的な奉仕や妊娠・出産を含む)を差し出す期待を担わされる。関係を終わらせ庇護やコントロールを脱すること、愛やケアを返さないことが「家長である男性の名誉を傷つける」女性への暴力を正当化してしまう。家父長制の影響が色濃い地域には、「家父長の沽券を守るためにわきまえない女を処罰する」社会通念があり、その圧が女性の命を危険に晒している。また、家父長制的なプライドにこだわる国家は、女性への暴力に向き合わない傾向にある。

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「不公平な社会」で、女性が殺される

 フェミサイドを分析する際のビッグデータとしておなじみなのが、国連薬物犯罪事務所(UNODC)が2019年に発表した殺人に関する世界的研究だ。報告によれば、2017年に世界中で意図的に殺害された87,000人の女性のうち、半数以上(50,000人)が親密なパートナーや家族によって、主に自宅で殺害されている。南アフリカ共和国では毎日平均7人の女性が殺され、メキシコでは6人、ブラジルでは3人、トルコ、ドイツ、フランスでは3日ごとに親密なパートナーによって女性が殺害されている。そして、コロナ禍のロックダウンで世界的に家庭内暴力が増え、女性に対する殺人が勢いを増していると警告された。

 また、殺人多い地域は収入格差も多い傾向に。所得の不平等を測定するジニ係数を見ると、南アフリカが63.1のスコアで第1位であり、ブラジルが54.7、メキシコが47.2。失業、貧困、飢餓につながる社会的不公平は、犯罪や暴力の原動力になる。そして、そういう暴力の矛先が社会的弱者である女性に向けられるというのは、実感としてもわかる気がする。

 さらに、世界保健機関 (WHO)の女性に対する暴力の調査では、世界中で、女性の3人に1人が、性的または身体的な暴力を受けているという結果に。女性を被害者とする殺人の38%は、親密なパートナーによって犯されており、家庭内での継続的な虐待、脅迫または脅迫、性的暴力、または女性の力や資源が男性より少ない状況を伴うということが報告されている。

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殺人件数は少ないが、女性被害者が多い日本

 ちょっと古いデータだが、上記のUNODCの調査では、日本は「殺人件数自体は少ないが、殺人被害者の女性の割合が多い」国として注目されている。殺人被害者における女性の割合が、中国・香港に次いで世界で2番目に多い。この結果については、「地球上で女性殺人の発生率が最も高い3つの場所はすべて北東アジアにある」とTIME誌でも記事になった。同記事内で、お茶の水女子大学の石井クンツ昌子教授が、日本では「3人に1人の妻が何らかの家庭内暴力を経験し、20人に1人が命の危険を感じる体験をしている」「女性の殺人被害者の20%近くが家庭内暴力の被害者」とコメント。実際、内閣府の調査では、2018年に検挙された配偶者間の犯罪(殺人、傷害、暴行)のうち、9割は女性が被害者だった。 

 ちなみに、11月12日から11月25日(女性に対する暴力撤廃国際日)までの2週間、行政が「女性に対する暴力をなくす運動」を実施。今年のポスターでは、加害者が悪いゼロトレランスのメッセージを打ち出しています。

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「女性議員の数」と「女性の安全」の関係

 10月末の衆院選では、当選した議員のうち、女性は465人中45人で全体の9.7%。政治場面でのジェンダーギャップが問題視されるなかで行われた選挙にも関わらず、さらに2人減る結果となった。ここで注目したいのが、先日発表された最新の女性・平和・安全保障指数(以下、WPS指数)だ。日本のWPS指数は、世界170国中35位で、インデックス値は0.823

 ランキングを見渡すと、1位 ノルウェー、2位 フィンランド、3位 アイスランドと北欧勢が上位を占めている。また35位の日本の周辺は、33位 韓国、34位 セルビア、36位 キプロスと、"先進国"の中ではやや低めの層に甘んじている。ワーストは、168位 イエメン、169位 シリア、170位 アフガニスタンで、女性の地位が低い文化圏であることに加え、紛争や政情不安によって女性が危険に晒されていることを表す結果となった。

 女性の政治参加は、女性の安全を測る際のベンチマークとして不可欠な数字だ。難しいデータの話をせずとも、当事者である女性抜きで作られた法律や制度が、私たちの安全に大きく関わってくるというのは実感として理解できる。

 ここで、日本の値を各国と比べると、女性の政治参加を測る議席数が、順位の近い国と比べても著しく低いことがわかる。日本は議会での女性参画率を見る限り、ワーストの国に近い。つまり、本来ならばもっと安全な暮らしが送れるはずのところを、政治分野で女性の参加率が低いことが足を引っ張って、私たちの平和や安全が脅かされいるとも読み取れる。

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調査無くして対策なし。

 フェミサイドは、ジェンダーに基づく暴力(Gender Based Violence)がもっとも極まった形態であり、多かれ少なかれ、世界中で起きている現象である。その背景には、社会における女性の立場、性差別、性別役割、権力の不均衡、ジェンダーステレオタイプ、偏見があり、独自のアプローチと理解が要される社会問題である。防止するためには、国単位の網羅的な調査が欠かせない。グローバルでは、暴力の起きた場所、時間、手段だけではなく、性別、年齢、民族性、被害者と加害者の関係、暴力の動機などのデータを分析することで、実効的な軽減&防止策に役立てられている。調べてみて初めてわかることもあり、例えばカナダでは、女性が被害者の方が、未解決事件が多いという事実が判明している。
 国内でも小田急線の事件をきっかけに、大学生が中心となって立ち上げた「フェミサイドのない日本を実現する会」が、1.7万人分の署名と要望書を提出。過去10年間に女性が被害に遭った殺人、同未遂事件の実態を明らかにすることや、女性に対する犯罪の加害者の傾向を調査・研究することも求めている。

皆本夏樹
@HERespeakmyself
9月27日に内閣府男女共同参画局の林伴子局長と面会し、1万7,353筆の署名簿と要望書を提出しました。

局長からの返答:
“女性が女性であることを理由にした殺人、さらには、女性が女性であることを理由にしたあらゆる暴力は、決して許されるものではありません。”

全文は→
chng.it/TPmXX6Xm
内閣府男女共同参画局長 林伴子 内閣府男女共同参画局長の林伴子です。 本日、「フェミサイドのない日本を実現する会」の皆本代表から、17,353人の方々か chng.it
2021/10/06 06:45
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代表の皆本さんに対する、オンライン上での反発を取材した記事。中傷書き込みをした人にも取材している……。

有料ですが、性犯罪の取材を続ける小川たまかさんの記事もぜひ。

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交差するヘイトクライム

 ヘイトクライムは、特定の属性をもつ人びとに対する偏見や差別や憎悪に基づき危害を加える行為であり、フェミサイドは女性に向けられるヘイトクライムだ。そして、女性という属性に、人種、国籍、宗教、ジェンダー、セクシュアリティ、障害、貧困などのマイノリティ性や被差別属性が交差すると、暴力に晒されるリスクは高くなる傾向にある。その上、被害そのものが可視化されづらく、調査の対象からこぼれてしまいがちな問題もある。

 フェミサイドを語る上では、他のマイノリティ属性を包括して連帯する視点と、個々の差別や問題を大雑把に不可視化していないかチェックする視点がどちらも必要だ。例えば、3月に米アトランタなどのマッサージ店が銃撃され、アジア系女性らが死亡した事件。アジア系へのヘイトクライムという大枠(容疑者は人種が動機であることを否定)の中に、より脆弱な女性がターゲットになったフェミサイドの側面もあった。また、アメリカのマッサージ店の中には時に売春が行われる店もあると考えられていたこと(アトランタ市長は「これらの店は合法的に運営されており、注意の対象にはなっていなかった」と説明、警察も風俗営業をしていた証拠はないとしている)、容疑者が性依存であり「今回の店は自分を誘惑するものであり、なくしたいと思った」と供述したことから、セックスワーカーへの偏見に基づく殺人の面があると報じられた。これをアジア系やセックスワーカーだけの問題と切り離さずに連帯しつつ、一方でフェミサイドという言葉の中でアジア系への差別やセックスワーカー差別などの個々の問題を不可視化しないことが肝要だ。

 日本でも、幡ヶ谷のバス停で路上生活者の女性が殺された事件や、立川のホテルで派遣型風俗店に勤務する女性が殺された事件が記憶に新しい。また、社会的には「女性に見えなければ害される」リスクを背負いつつ、フェミサイドという局面では「女性に見えることで害される」危険もあるというジレンマを抱える、トランスジェンダー女性を疎外しないよう配慮が必要だ。

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被害者非難と加害者擁護を引き起こす報道

  女性の安全を守るためには、メディアの問題も検証する必要がある。フェミサイドの疑いがある事件が起きた際、被害者や加害者のプライバシーにいたずらに踏み込むような情報は、被害者非難と加害者擁護を引き起こし、恐怖を拡大する。また、フェミサイドは女性嫌悪が極まったヘイトクライムという側面があるので、フェミサイドが疑われる事件について女性嫌悪的な姿勢の論者やコメンテーターにステージを用意することの有害性については、メディアの倫理がもっと問われるべきだ。「両論併記」や「中立」をお題目に、安易な加害者への共感や事件の正当化、女性嫌悪を煽るネタにしないよう細心の注意を払って欲しい。

 ちなみに、海外の研究では、恋愛ドラマやラブソングに出てくるような「お前は俺のもの」、「誰にも渡さない」「死ぬほど愛している」、「あなたのためならなんでもする、どうなってもいい」、「死んでもそばにいる」という一見ロマンティックな表現が、恋愛文脈で相手を所有し執着し生死の問題にする社会通念を刷り込み、正当化しているのではという問題提起があった。

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フェミサイドは政治課題! 欧州の取り組み

 フェミサイドという現象を認め(日本も頑張って!)、網羅的な調査によって傾向を把握した後は、いよいよ法や制度の整備。そして、意識改革のターンだ。

 まず、欧州には女性保護の国際基準とされてきた、イスタンブール条約(女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンスの防止に関する欧州評議会条約、2011年に採択)がある。女性に対する暴力の防止や被害者の保護、加害者の訴追などについて網羅していて、女性に対する暴力(セクシュアル&ジェンダーマイノリティも包括)に対する法制度の立て付けとして、世界的な手本になっている。日本でも2020年に内閣委員会調査室が調査した形跡があったので、ぜひ見習ってほしい。

 とはいえ、10年も前に女性保護のゴールドスタンダードとされる条約を採択しているはずの国々でも、未だにフェミサイドが社会問題となっているのが現実だ。条約を採択して、はい終わり!という単純な話ではない(家父長制の強固な文化圏の中には、政情の変化で破棄した国もあるし)。各国の対応をみると、女性への暴力が政治課題として取り扱われ、撲滅を目指して試行錯誤されていることがわかる。

 フランスでは2019年に緊急会議が開かれ、フェミサイド対策に500万ユーロ(約5億8200万円)の予算を拠出。避難所や緊急宿泊施設の増設、女性からの訴えがどう取り扱われているかの監査、相談手順の簡略化などの対策が講じられた。記事内では電気ショックを与える足輪が検討されているみたいだったけど、どうなったんだろ?

 スペインでは、2003年からフェミサイド事件を公式に記録。女性への性暴力事件を専門とした特別裁判所を設置している。医師や警察官、裁判官に、夫婦間暴力に対処するための訓練を課し、すべての訴えを裁判所に登録し、72時間以内に対処することが義務付けられている。

  イギリスの内相は、ロンドンで帰宅中の女性が警察官によって殺害された事件を受け、女性への加害事件に対する警察の対応を調査するよう独立機関「警察監査局および消防救急サービス(HMICFRS)」に命令。調査報告書では、「女性や少女に対する暴力対策は、テロ対策と同等の優先度で行われるべき」との指摘がなされた。

 また、ロンドン市長は「学校で女子に敬意を払うよう男子に教え、適切で健全な人間関係教育を行うことから始めるべき」と述べ、政府に対し「ミソジニー(女性嫌悪)を法律で禁止」し、「公共の場での女性への嫌がらせを刑事事件として取り扱う」べきと訴えた。

 イギリス野党・労働党のジェス・フィリップス下院議員は、毎年3月8日の国際女性デーに、過去1年間にイギリスで男性によって殺害された女性の名前を読み上げている(翻訳付きで見たい人はこちら)。今年は118人の女性の名前を読み上げ、「私たちはこのように女性が殺されていることを、ただ日常生活の一部として受け入れてしまっている」と述べた。痛ましい現実があるとはいえ、「フェミサイド」という単語を用いて政治の俎上に乗せる女性議員がいることは、少し羨ましく思える。

Jess Phillips MP
@jessphillips
Since last year on this day, these are the women killed in the UK where a man has been convicted or charged as the primary perpetrator in the case.
2021/03/12 01:27
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フェミサイドを放置する方が、よっぽど不名誉(ペルーの場合)

 女性に対する暴力は、罰則を強化すれば減るという単純なものではない。長年に渡ってDVが深刻な社会問題となっているペルーでは、2016年にジェンダーに基づく暴力に対する国家計画を策定。専門の緊急委員会を設置し、政府主導で数年に渡る優先課題として、女性への暴力根絶に取り組んでいる。

 主な取り組みとしては、女性のための緊急センター(年中無休・24時間対応)、被害者のためのホットライン、専門警察隊(2018年には2倍に増員され、保護措置中の被害者訪問が義務付けられている)の設置。DVの犠牲になった子供のための緊急医療体制、保護ユニット、給付金制度の拡充。暴力防止のための教育の整備などが挙げられる。

 コロナ禍でのDVの増加などでまだ明確な効果が出たとは言えずもどかしいところだが、一国の大統領が国民へのメッセージとして「マチズモを終わらせ、女性に対する暴力を非難し、フェミサイドを根絶しよう」と呼びかけたのは大きな意義があり、世界的にも注目されている。

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 というわけで、長くなっちゃったけど、世界のフェミサイド情報やデータを私なりにリサーチしたスクラップをお届けしました。女性が殺害される事件に「私だったかもしれない」と不安や恐怖を抱くのは当たり前だということ。そして、女性に対する暴力の撲滅は政治課題であり、網羅的な調査や施策が必要だということが伝わったら幸いです。

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©︎maccanna

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