あまりにもあり余る保護犬

家に保護犬が来ました。
長田杏奈 2021.09.02
誰でも

犬のルッキズム、犬のエイジズム

 昔取材した心理学の先生によれば、シスヘテロ男性がマッチングアプリやエロ本で女性を眺めるときは、ホームセンターやカタログで工具を選ぶときと同じ脳の領域が活発になる傾向があるらしい。要は、人間としてではなく物として、仕様や機能をチェックしているってことなんだろうな、と記憶した(その後、関係を構築すると人間と関わる分野が活性化するらしいから安心してほしい……)。6月に16年暮らして愛犬を亡くし、「あんな最高のワンワンには二度と出会えない」と嘆きながらも、犬のいない生活は考えられず「次は保護犬で」と探すことにした。夜な夜な里親募集サイトを巡回しながら「私いま、カタログで工具を眺めるように犬を見ているのでは?」と疑念が湧き、冒頭の話を久しぶりに思い出した。どの犬もかわいいのは間違いないのに、私は何を基準に一頭に絞ろうとしているのか。

 健康でかわいい子犬は争奪戦だ。ただし、その健康でかわいい子犬も「最近の流行の顔とは違うから良い値がつかない」とブリーダーから放出された子だったりするし、その子犬を産んだ母犬も同じ譲渡会に出ていたりする……。疾患のある犬、老犬、野犬の成犬、見た目が万人受けしない犬、(人間から見て)問題行動のある犬は、より根気強く新しい家を見つける必要がある。人間がごめんという罪悪感と全員うちの子になりなさいみたいな大風呂敷庇護欲が交互に湧いてきて、友人に「犬のエイジズム、犬のルッキズム……」とLINEして心配された。

 最近、Instagramでプロレスラーの棚橋弘至選手のご家庭がシニア犬を迎えていて、試合を見るよりずっとずっと推す気持ちになった。どの犬にもやがて訪れる局面とはいえ、一緒にいられる時間、医療費や介護のことを考えると、経済面も含めた包容力と覚悟が必要。なかなか真似できることではない。

山口の野犬と千葉のムツゴロウ

 保護犬情報をチェックしていると、たびたび「山口県周南市」というワードを目にする。「山口県周南市」では野犬が繁殖して群れをなし、問題になっている(検索すればニュース記事が出てくるけど、人間目線ばかりだと辛いからリンクは貼らない)。数の多さもあるのか収容期限が延長できず、差し迫った呼びかけが多い。子犬だと里親が見つかりやすけれど、成犬で人が苦手な子だとなかなか難しい部分もあるらしい。地元でたびたび引き出しを請け負っている「まあくんハウス」という保護団体の存在を知り、クラウドファンディングで支援してみた(現在は達成済み)

 一度、中型の野犬の子を千葉県の「預かりさん」(里親が見つかるまで家庭で預かるボランティア)の家に見に行ったことがある。「預かりさん」経由の子は、人間や家庭生活に慣らし保育してもらえ、ブログやSNSを通してキャラクターが掴みやすいというメリットがある。ただその時は、人見知りして吠えて逃げる様子に怯んで、「このまま少しでもこの素晴らしい犬コンシャスな家にいた方が幸せなのでは?」と迎えるのを躊躇ってしまった。「小さい頃、ムツゴロウ王国に憧れて」というその人は大変に面倒見が良く献身的。4頭の犬たちから圧倒的な信頼を得ていた。犬たちよ、わかるよその気持ち。

「繁殖引退犬」という衝撃ワード

 犬たちはいろいろな経緯で里子に出される。多頭飼い崩壊、パピーミル(子犬工場)からの救出、ブリーダー放出、ブリーダー廃業、アレルギー発覚、飼い主の病気や死亡、引越しや転勤、同棲解消、ペット禁止物件でバレた、コロナ禍における経済逼迫、コロナ禍で癒しを求めたが思ったのと違った……などなど。そんななか、里親サイトを眺めていると「お母さんを頑張ってきた子です」と書かれていることがある。ブリーダーで子犬を産むために飼われていたけれど、加齢や不適格でお役御免になった母犬、つまり「繁殖引退犬」ということだ。「繁殖引退犬」「パピーミル」で検索すると悶絶するほどひどい話が出てくる。あまりにひどいのでリンク貼らないから、気になる人はチェックしてみてね。

 私の第一印象は、(泣)……犬のギレアデじゃん(『侍女の物語』に出てくる性差別的な保守カルト独裁国家。子供を産む機械として「侍女」という役職がある)だった。ネット上のご意見もひと通り見たが、「ブリーダーを責めるのは素人の偽善者。安い値段でブランド犬を飼えるんだからウィンウィンじゃん!」、「ブリーダーは鬼畜。悪徳」、「繁殖引退犬を保護犬なんて美化したらダメ、だって新しく繁殖犬を補給するのに加担しているようなものだから」、「可愛い盛りの犬を途中で手放すなんて信じられない!」的な様子だった。

「かわいがられていた」と信じたいけれど…… 

長田杏奈
@osadanna
コッペちゃんきました🥖
2021/08/26 12:46
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 話すと長いから割愛するけれど、最終的には里親募集サイト『anifare』を利用して、6歳の元繁殖犬「コッペちゃん」に出会った。最初は違う子について問い合わせたのだけれど、「他におすすめの子がいますよ」と勧められた中から決めた。『anifare』に載っている写真は、歯とか耳の状態がチェックできるようになっている。最寄りの提携獣医で健康チェックを兼ねて受け取ることができ、その後も同じクリニックにいろいろ相談できていいシステムだなと思った。

 少し慣れた頃、コッペの写真を送ると「ブリーダー様もかわいがっていた子なので喜びます」と返信が来た。いろんな記事や体験談を読み漁って「これまでどれだけの辛酸を舐めてきたのだろう」と案じていたので、少し安心した。とはいえ、コッペの様子を見ていると「私のイメージする"かわいがる"とはかけ離れていたのかもね」と疑心暗鬼になったり、何にしろこれからうんとかわいがればいいんだ、コッペのペースで気長にゆっくり過ごそうね、と思い直したりして過ごしている。1週間そこらで先輩面するのも申し訳ないけれど、もしこれから犬や猫と暮らす予定がある人は、ぜひ保護犬・保護猫から迎えることを選択肢に加えてほしい。

 2021年6月から順次施行される動物愛護法の改正により、行き場を失う繁殖犬猫は13万頭を超えると言われている。

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ニュースレター「なんかなんか通信」は、美容ライターの長田杏奈が、コスメや気になるトピックについてお届けする、Podcast「なんかなんかコスメ」連動のニュースレターです。週に3、4通を目安に、女友達に手紙を書く気持ちでしたためて投函します。

3本目のグレージュライナー

 見出しやタイトルに、やたらと「目力」「デカ目」が入った時代があったけれど、ここ数年は目のフレームを際立てたり拡大するようなメイクは下火。撮影で、黒いライン、黒いマスカラ、まぶたのキワの締め色を見かけなくなって久しい。

 年を重ねると目のフレームが曖昧になるけれど、個人的には「ぼやけた目元をいかに無理にくっきりさせないか」を大事にしている。去年あたりからニュアンスカラーのライナーが主流に。伸び過ぎた髪や熟女感との兼ね合いで、目元に温度を出さない方が似合うので(ボルドーはおろか、ブラウンでも温か過ぎる)、グレーやグレージュをいろいろ試した。スウォッチではどれもいい色だけど、実際に目元に塗ってみると黒と変わりないフレーム感だったりして、締め過ぎず柔らか過ぎない一色がなかなか見つからなかった。

 そんななか出会った、ヴィセ リシェ ブラウンズ クリーミィペンシル BR303 グレージュ は、メイクする日はほぼ毎回使うほど気に入り、ついこの間3本目を買ったばかり。スッとしたグレージュにほんの少しブラウンのニュアンスを加えることで、まつげの影が自然に濃くなったような絶妙な馴染み感がある。アイシャドウだけより気持ち眼差しが深まったかも?レベルのニュアンスライン。柔らかなジェルテクスチャーで、グラフィカルにならないところも好き。

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サステナブル&クリーンコスメ、「パッケージはいかに?」

 時代の変遷とSDGs施策により、さまざまなメーカーから「サステナブル」や「クリーン」を掲げた新製品の報が届く。パッケージについて特段表記がない場合は、なるべく「パッケージどうなってますか?」と訊いてみる。「リサイクルプラスチック」「バイオマス素材」という答えに混じって、なかには「すみません、プラスチックです」との回答も。環境を気にかける人のなかでもプラスチックに対する考えは多少のばらつきがあるのかなとは思う。が、現状でプラスチックがわりと象徴的な存在になっている以上、コテコテのプラ容器に入ったものを真正面から「サステナブル!」と紹介してしまうことは、「ウォッシュ」と指摘されるリスクがあるなと感る。

 容器が間に合ってないからといって、他のサステナブルな取り組みを否定しようとは思わないけど、今や容器の話は素通りできない。パッケージに配慮や努力(今後の展望の予告でもいい!)がなされていると、安心して紹介しやすい。さらにいえば、容器周りのサステナブルな取り組みについては一回発表して終わりではなく、製品のリリースに値段や容量や問い合わせ先のような扱いで銘記されるようになるとありがたいな。

 気紛れな問い合わせ活動のなかで、「すべての容器が再生プラスチック素材(100%ではありません)を使用した原料です。そして100%リサイクル可能な容器を使用しています」と回答があった、グリーンビーバーの新製品を紹介する。グリーンビーバーは、カナダのオーガニックライフスタイルブランド。ヴィーガン、サステナブル、グルテンフリー、フッ素フリー、エコフレンドリー、非遺伝子組換え、クルエルティーフリー(動物実験なし)で、エコサート認証を取得している。

ラベンダースプレー(デオドラント)105㎖ ¥3190(9月25日発売)/ケーツー・インターナショナル

ラベンダースプレー(デオドラント)105㎖ ¥3190(9月25日発売)/ケーツー・インターナショナル

 月末発売の新製品「ラベンダースプレー」は、オーガニックのラベンダー精油、セージ油、カモミール精油を中心にしたハーバルな香りのデオドラント。カナダの先住民族イヌイットが愛飲していたハーブ「ラブラドールティ」を配合している。臭いケアとしても、リラックスできるボディスプレーとしても。

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循環型ショッピングプラットフォーム「LOOP」始動

 気に入ったプロダクトを再利用可能な容器で購入することができる、循環型ショッピングプラットフォーム「LOOP」の試運転がスタート。早速登録してみた。美容ブランドでは、今のところ資生堂 アクアレーベル、、ネイチャーズウェイ(ヴェレダを扱っていて、チャントアチャーム やナチュラグラッセなどの自社製品もあるメーカー)のエレキュイール、マジックソープが有名なドクターブロナーなどがラインナップ。これからフィッツも入ってくるみたい。買うならエレキュイールだったけど、品切れだったのでしばらく様子見……。

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ニュースレターの会社の人に「保護犬の話書こうかな」って伝えたら、「最後の方にちょっと書くのがいいんじゃないですかね」とアドバイスされたのに、保護犬がっつりコスメちょっぴりになってしまいました。どんな犬もみなかわいいよね。最後までお付き合いありがとうございました!

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