台湾の生理ブロガーが、アジア初の月経カップを作るまで
おはようございます。昨日は「ラブピースクラブの生理トーク Vol.1 台湾の女性と話そう!」で、台湾初のタンポン&月経カップの開発者であるヴァネッサさんにお話を伺いました。イベントの後に中国語でいろいろ調べてみたら面白かったので、伺ったお話とリミックスして、生理ブロガーだった彼女が「台湾の生理の母」と呼ばれるようになるまでのヒストリーをまとめてみたよ。
ニュースレター「なんかなんか通信」は、美容ライターの長田杏奈が、コスメや気になるトピックについてお届けする、Podcast「なんかなんかコスメ」連動のニュースレターです。週に3、4通を目安に、女友達に手紙を書く気持ちでしたためて投函します。
米国のスーパーで壁一面のタンポンに出会い、生理ブロガーに
2003年に米国の大学に留学したヴァネッサ(曾穎凡 Zeng Yingfan)は、スーパーの生理用品コーナーの一面に陳列されたタンポンにカルチャーショックを受けました。欧米のタンポン使用率約8割に対し、当時の台湾は0.2割で、日本の約3割よりも低かった。生理用品=ナプキンが常識という台湾で育った彼女は、漏れや匂いが気にならず、生理中でもスポーツを楽しめるタンポンの快適さと便利さに感動しました。
しかし、故国では「取り出せなくなりそうで心配」「処女膜を傷つけるのでは」という不安や誤解が未だに根強かった。そこで、膣の構造やタンポンの正しい使い方を啓発すべく、2004年に生理ブログを立ち上げ。月経にまつわる知識や生理用品のレビューの投稿を始めました。
世界のタンポン工場にメールしまくり。初の国産タンポンブランド「凱娜」を立ち上げる
ヴァネッサは、台湾に帰国後の2007年に会社を設立。当初はアメリカのタンポンメーカーの代理店を志していましたが、さまざま事情から台湾初の国産タンポンメーカーを立ち上げることを決意。Google検索で世界のタンポン工場をリストアップし片っ端からメールしたり、煩雑な手続きを経て「医薬品製造免許」を取得するなど苦労したようです。2010年に、ようやく台湾初のタンポンブランド「凱娜(カイナ)」をローンチ。これまでにないカラフルなパッケージが人気を博し、1ヶ月で3万箱を売り上げるヒットを記録しました。ヴァネッサが火付け役となり、現在では台湾のタンポン使用率は0.2割から4割にまで達しているそう。
「未婚の人は使用を控えましょう」
そもそも台湾では、2010年頃までタンポンのパッケージに「使用するときは医師の診察を受け、指示に従いましょう」「未婚の人は使用を控えましょう」という注意書きの表示が義務付けられていました。タンポンの発売時期が、表示義務が見直された後だったことについて、ヴァネッサは「ラッキーだった」と振り返ります。「タンポンで処女膜が破れる」という誤解はもちろん、「結婚するまで処女でいるべき」という純潔思想が、つい最近まで当たり前のように生理用品にくっつけられていたと思うとなかなかグロテスクなものがありますね……。
「台湾の処女が減る」という母の言葉
まだまだタンポンへの忌避感が根強いなかで「凱娜」を発売したヴァネッサ。賛否両論が渦巻くなか、いちばん印象に残った言葉は、実の母からの「タンポンのせいで、台湾の処女が少なくなる」という言葉でした。当時は「医療従事者などの長時間ナプキンを交換できない職業の人を助けられる」、「両手を使ってナプキンを交換できない障害者の方に、片手で交換できる生理用品を提供できる」と説得したものの、ブログを開設したとき同様、生理や身体に関するの知識を広める必要性を痛感しました。